最強でいてよ僕の特別

初めて聴いたときから今の今まで「この曲わたしのこと歌ってる、気持ちいい」と思う曲を作り続けている、わたしにとって特別な超歌手が居る。

彼女の歌う曲はわたしだから、わたしの光だから、愛する人に教えてみたことがあった。言われた言葉は「消してくれない?あなたが手首を切っている想像をしてしまって辛い」だった。
彼女に投げつけられる言葉は未だに廃れない「メンヘラ」という下らない死語。

それからというもの、わたしは愛する人に彼女のことを教えないようになった。それは誰であっても同じことで、「わたしにはもっと特別で、もっと好きで、嬉しくて、キラキラしていて、圧倒的な地獄の最中すらファンタジーにしてしまうものがあるけれど君は分からなくていい」とずっとずっと胸の奥に大切にしまって宝物のように握り締めていた。
どうせ分からないんでしょうという感情と共に。
彼女を否定されることは、わたしを否定されることと同義だから。これはわたしの業だから。

わたしの特別を教えないこと、それはそれで良いのだ。簡単に分かられてしまったら、せっかく汚れた意味ない。
わたしの好きなものを好きになる必要なんてマジで無いし、君のオススメに面白いものはひとつも無くてもそれでもなんか笑える毎日が逆に新しいって彼女も歌ってる。
わたしの愛する作品のことは、これからもわたしが愛し続ければそれでいいのだ。
僕の特別を取らないで。



彼女のライブ映像を観た彼が泣きながら電話を掛けてきた。彼の琴線に触れた証拠だった。
そんなこと、今まで一度だってなかったのに。


「わたしの夢は君が蹴散らしたブサイクでボロボロなライフを掻き集めて大きな鏡を作ること」