真夜中はいつですか

人がどうして食べるかって生きようとしてるからでしょうとわたしが言うから三日間ロクに食べられなく、三日目には緑色のゲロを口からも鼻からも吐いて昏睡していた。
さすがに何か食べなくてはと四日目に林檎を食べた。綺麗な空気を吸わなければと外に出て言われたままに散歩をして言われたままに煙草を吸うて、自販機のまえで立ち止まるとセブンアップの緑缶を見つけてあの坂の上、青い自販機、飲み合って飲み合って、きみは炭酸が好きやった、脳味噌を駆け巡る思い出なんていうものをいま飲まんとするなら溺れてしまいそうで何も買わずに立ち去った。
空は分厚い雲がひろがっていてその下のほうはピンク色に薄水色に濡れていた。道路は黒々と光り、信号機の赤ははツヤツヤとしていた。雨上がりだった。
コートを着なくても大丈夫であり今朝なんてツバメの夫婦が訪れているのを見付けて、風がどんどん丸っこくなっているのでこれを春だと繋がりたくて伝えてもわたしとあちらの差異に気が遠退きわたしは縁だけになってしまう。
ねぇ、きみはどこに居るん、きみの居るところはどんなにおいがするん、どんな色をしてるん、ねぇ、わたしは今、どこに居るん。

世界のスピードとおのれのスピードが全くもってついていかず、わたしは季節からも置いて行かれている。明日も明後日も一ヶ月後も一年後もどうしたらいいのか分からない。どうしてみんな、こんなこと成せているのか。生きることがこんなにも大変だなんて聞いてないよと毎日毎日降ってくる針に刺されながら泣きじゃくって朦朧とした目をしているわたしは甘えているのでしょう。生きるには敏感過ぎるのでしょう。みんなね、あなたみたいにいちいちのことに反応して笑ったり怒ったり死にたくなったりしてたらね、この世界は回らなくなるでしょう、みんななんなんとやってのけてる訳であなただけが赦されると思うなよ。傷付いたからって人のことを傷付けていいのか、お前の身に起こったことはそんなにも悲劇か。畜生。わたしは普通になりたいんだよ。

本当だったらちゃんと笑って傾聴したりたい、わらいがおを望んで尚且つ満ち足りたい、わたしの箱のなかには呆れるくらいわたししか居なく、いつだって居なくなるのは人ばかりで、わたしはいつだって失ってから気付くのだ。わたしの好奇心も興味も関心も結局のところ突き詰めるとわたしにしか無いのにわたしはわたしを愛していない。
苦しいことは感じ続けなければならないこと。感じなくなったら取り返しが付かなくなってしまう。世界を壊してしまう。全てその中にあるのに。

信じた言葉はいつだって翻りやがりわたしの脳味噌をミンチにする。どうしてを潰す力をあなたは持っている。わたしはどこに居て。ねぇわたし、生きてるの?死んじまいたいのに、もう死んでるみたいでわたしは生きながら死んでいる。

幸せだよって笑わないとしあわせにしてあげられないのならわたしは誰とも一緒に生きられない。
わたしが消えてしまう