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かつて、身を切るようにしてまで綴ってきた行為からすこし遠くに来たのだと思った。

わたしにはこれしかないんだと、唇を噛み締めながらずっと縋るように、探るように、時には衝動として、時には抜き差しならない静かな真実として、ずっと誰に話すでもない言葉を綴ってきた。

わたしの生肉に存在し、器官を通して発せられる言葉たち。
一体、どれだけのものを傷付けたのだろう。きっと、わたしの言葉にはある種の力がある。
力を持つということは、徹底して自己を監視するということだ。監視することを忘れたわたしは人を殴りつけ切りつけ、それを恐れた監視するわたしは言葉を使うことがほんの少しだけ怖くなる。

湿り気を帯び、本当に刺すべきもの以外すら刺してしまう武器ではなく、乾いた武器を持ちたい、愛するものの尊厳が踏みにじられたときに本当の意味で闘えるように という祈りのような決意は、まだ産まれたばかりだ。

わたしはもう、言葉を自分以外の誰かへ向かって発しようとしているのだと思う。それはきっと、あるかどうかも分からない光へ向かって暗闇のなかで手を伸ばしたときの、その光になり得るだろう。

わたしが産んだ、わたしだけの血だらけの光。