マジックミラー

流行りの音楽じゃ踊れないし、夜じゃなきゃバイトも出来ないし、死ねとか嫌いとかちゃんと言っちゃうし、社会にはまだまだまだまだ適応出来ないし、気付けばお金は減ってるし、自分のことにしか興味がわかないし、周りを見渡せばつまらん馬鹿ばっかだし、女に男に産まれたというだけで毎日気が抜けないね。
仕事を手にしたと思ったらすぐ逃亡したくなっちゃうし、逃亡するにはお金がかかるし、野垂れ死ぬには根性が足りないし、毎日8時間働くことが嫌でしょうがない。
子供のころになりたかった野球選手もお笑い芸人もアイドルもケーキ屋さんも全部全部結局なれなかった夢だった、毎日いいにおいがしてそうな他人のSNSを薄目を開けて盗み見ては煙草ばかりが減っていく。
誰のことも愛しちゃいないのに寂しくて寂しくて仕方がないね、セックスしたからといって寂しさなんか無くならないし下手したらもっとどん底になるって頭のどこかで分かっていても夜中メールで届く脆い脆い「好き」だけで取り敢えず明日だけはやっていける気がするんでしょう。
どうせ身体を重ねるなら可愛くて情けなくて苦くてやるせなくて甘いのがいいね、気持ち悪くないと気持ち良くなれない、生きてるだけではイケない、もっともっと気持ち悪くなればいい、わたしの前だけでは気持ち悪くなればいい。
お母さんもお父さんもよく知らなくて優しい当たり前のお兄ちゃんなんて以ての外、女になるのが早かった、大人になるのが早かった、そうしないと机の下で黙れの合図に脚を蹴られてしまうから、そうしないとボコボコに殴られてしまうから、大人になるしかなかったね、大好きな人達を描いた絵はビリビリに破られて、弱くそれでも僅かに光るしあわせの証だった絵筆はバキバキに折られて、それから絵が描けなくなっちゃった。

好きな歌をライブでやってくれたから死ねる。きみもこうやって生きてきたんでしょ。