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まち

我が生活拠点の町に澁谷くんが訪れたのは二回目で、一回目同様にこの町のことを賞賛していた。
"生活の町"といった具合に田舎なところなので空が広く樹々が多く、それも中々に彫刻性を持った樹ばかりで空はよく見えるし団地もあるし夕方にはちゃんと知らない家から夕餉のかおりがする、田舎だから謎の空き地が出現したり、立派な鯉が泳いでいる川があったり、わたしのアパートの近くには山があったり、いつも同じ時間、同じ場所に礼儀正しくじっと座ってる猫も居る。
この町の良さはわたし自身も感じてるはずなのに、何も分からないふりしてどこが良いのか何度か訊く、そうやって、他人の視点に潜り込む。そういうことを試みる節がわたしにはあって、面倒臭え〜と我ながら感じる。
この町の何がどう良いのか訊いたら、澁谷は「ロケーショナル」と言っていた。