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お前を殺してブヨブヨにする社会

この間、就職面接の為に某医院へ向かった。
真っ黒なスーツはわたしの苦手な『制服』だしヒールは慣れないし楽しいときにしか笑いたくないけれどやるしかないよねと言い聞かせ朝から面接へ向かった。いってらっしゃい頑張ってのふたつの声でわたしの気持ちはすこし軽くなった。
医院の人達はみんな優しくて、本当に良くしてくれた。常にわたしに気を配ってくれた。そこの医院は目の前の患者に向き合うことを一番大切にしていて、わたしここで働きたいと思えた。そのことが堪らなく嬉しかった。
わたしは面接の後にその場で内定を貰った。こんな社会不適合なわたしがとても感じが良いと褒めて貰った。嬉しかった。
見学そして面接と一連の形式の後にスタッフの方達とお喋りをした。女子会話のメインテーマである恋愛話になり、恋人とはどこで出会ったのかと聞かれた。
うっ、と逡巡した。凡ゆる面接において、宗教と政治の話がタブーだなんてわたしだって分かっていた。けれどここで下らない嘘を吐くのも何か違うと思い、あまり考えずに軽い気持ちで、且つとても丁寧に言葉を選びながら、恋人とは政治に対してデモを行っている学生主体の団体の中で出会ったこと、またそのデモや団体は徹底して非暴力であること、サウンドデモというカッコ良いものであることを説明した。

政治の話になった途端、その場の空気が変わったのに気付いていた。
けれど帰る時も彼女らは笑顔で見送ってくれた。
帰ってきたら恋人と大好きな女の子が待っていてくれて、わたしの内定決定を自分のことのように喜んでくれた。
数日後、その医院から電話があり、内定取り消しを伝えられた。話された理由は明らかにあの日の話と辻褄が合わない建前であり、本当はわたしが政治について話したからだと感じた。
母親に内定取り消しを伝えたら、面接では絶対に政治と宗教の話はタブーであるし恋人の存在も居ないと隠すものだ、何をしているんだと責められた。
おかしかった。
宗教を持つ人にとってはそれがその人の一部だ。そしてわたしたちの生活はどうしたってどう考えたって政治に繋がっている。どんなに知らない振りをしたくたってわたしも君もあなたもお前らみんな全員だ。どうしてそれがタブーなのか。どうしてその話をしただけで、それも一つの政治観念を強要するでもない話の中で、わたしの、そしてあなたの今までのすべてが打ち消されてしまうのか。
学校のクラスメイトや他の友人達の前で政治の話をすることの恐怖、その空間に蔓延する違和感、「目を塞いで耳を覆えばこの生活は続くでしょ」「知らない振りをする為、だからお前は黙れ」。ずっと感じ続けてきた。
デモをやるんだよって話をしても選挙があるよって話をしてもそれはずっとずっとずっとずっと消えちゃくれなかった。
みんな、3.11のときに気持ちが悪いくらい全員同じ目をして声高に言い合っていた「絆」はどうしたんですか。絆じゃなかったんですか、助け合うんじゃなかったんですか、何で今原発の話をすると右から左へ流していくのですか、それともあれですか、あの時の「絆」は、もし自分の住む地が東北のようになったらという不安から、自分を守る為に叫んでいただけなんですか、今は平和(笑)だから叫ばなくなったんですか。


これからわたしはシャカイジンになってお金を稼がなければならない。
わたしを支えてくれる恋人のこと、こんなにも理不尽な現実である政治のこと、あなたの一部であるかみさまのこと、それを話しただけで存在すら否定されるような気持ちになる『社会』なんかに属さなければならないのかと考えたら本当に目の前が真っ暗になった。そして怒りがフツフツと湧いた。
おかしいのはあの医院の人達ではない。そこを履き違えて怒りの矛先を見失ってはいけない。彼女たちは本当に、こんなわたしに対して親切に接してくれたんだ。
わたしが怒っているのはこのクソみたいな社会に対してだ。おかしいことをおかしいと言えば、大切なものを守りたいと言えば、それも個人の思想信教に基づいたものであればあるほど排斥されるような、こんな社会に対してだ。
わたしはこれ以上殺されたくない。殺されたくないだけなんだ。
社会なんかに、そんな下らないものなんかに殺されて堪るか。
わたしはこの怒りを絶対に忘れてやらない。社会に蔓延する、わたしの生活に蔓延する違和感を忘れてなんかやらない。

わたしの愛するあなた方が、本当に生きることが出来る社会をわたしは希求し続けます。