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ハッピーエンド

昨日、だいすきなひとが下北沢にて。に連れて行ってくれた。
笹口騒音と忘れらんねぇよと靖子ちゃんを見た。ずっとずっと泣いていた。
奥に居たわたしの時には頭と体を揺らしながらステージを見上げて視線を下げて後頭部をみつけてステージを見上げるを繰り返した。
笹口騒音の「君はこんなもの咥える必要ないし、君はこんなもの飲み込む必要ないんだよ」という歌詞に苦しくなって息が止まるかと思った、言えないこと言いたいのか言いたくないのかもよく分かっていないことを頭ん中に抱え込んでぱんぱんにしたまま見上げた靖子ちゃんは始終泣きじゃくるわたしと目を合わせウンウンと頷いたあと彼女自身の瞳にも涙を溜めた。何度も何度も目を合わせては「安心していいよ」と言わんばかりに「君もこうやってきたんでしょ」と言わんばかりに頷いた。最後に嗚咽を堪え切れずにギターを床に置く彼女は本当に女の子だった。ちいさな身体に最大の包容力を抱えて震える女の子だった。
ステージの光に照らされる人間の姿は圧倒的にふくらみを持っていて現実の筈なのに絶対絶対触れないんだって思わせる。絶対絶対触れないんだって思ってたら頭を撫でられて手が触れてなんだか訳が分かんなくなった。訳が分かんなくなりすぎて一層泣いたら無条件の眼差しに抱きすくめられて、何だか「あなたはここに居るんだよ」って言われてる気がした。そこに立っているという事だけで存在を肯定された気になってしまって、ライブハウスを出たあと下北沢の街を上手く歩くことが出来なかった。身体が地面から浮いていて、だいすきなひとの手を上手く握ることが出来なかった。 

すこしまえに前触れもなく不機嫌になられた挙句連絡を取り合わなくなった人から再びいきなり連絡が来るようになって一体何でなのか昨日電車の中で分かったあなたわたしと調度いい気持ちいいところだけを探り合いたいんですね。
わたしが斜め上の位置をキープしたまま絶対そんなこと言う奴じゃねえだろお前誰だよな言葉群に半開きの目で返事をしていく内に知った情報は成る程すぎて可笑しかったよごめんねわたしあなたのベタにはなれないわたし餓死したくないんだ。今ならPINK色の金属バットでお前のこと笑いながらも泣きながらも撲殺出来るよって思ったけどわたしの心は意外にもダメージが少なかった。わたしあなたの事どうでもいいみたい。
「調度いいところで止められるひとがハッピーエンドよ」。
37歳ではスーサイドやめた。


帰って来てから愛しい愛しい台所で煙草を吸いながらあまいを読んだらわたしの中身がそこには在った。
分からないでしょと思い言わないことを増やすあなたは傲慢だしどんだけ自分が上だと思ってるの?と背中を丸めた男の子に吐き捨てるように言われたことがあるけどそんなんじゃない。言えないことが増えるのは臆病だからだし分からないでしょの最中にどれだけわたしが分かって欲しいと震えているのか、分かりたいんだからそんなことを言わないでと伝えるけれどあなたたちわたしに何度分からないと言ったか知ってるの、分かるはずないよだってわたし自身にだって分からないんだから、分かりたいと言うひとが傷付くのが厭で汚いことも狡いことも言うべきなのではと振り絞って伝えてみればきみはとても辛そうな顔をするね、わたしこのひとにこんな顔させたんだと死にたくなる、死にたくなりたくない、怖い、わたしは怖い、でもわたしはわたしを抱えなきゃ、寄り掛かることで相手を潰してしまう事をもう繰り返したくないと抱き締めて欲しいが合わさってわたしもう訳が分からない、毎日が生ぬるい地獄で、圧倒的にわたしを叩き落として這い上がれなくするほどの強烈な光を放つ地獄をいい加減お前らわたしに見せろ生ぬるすぎてつまんねぇんだよって毎日毒づいてるよ、だいすきなひとの身体とわたしの身体の輪郭が境界線になっていてそれが堪らなく邪魔だ邪魔だ邪魔だ、分からないとか分かるとか何なんですか

そんな、説明なんて出来ないくらい混沌とした声にぎゅっとされて真空パック状態になっていたら、だいすきなひとが大丈夫?って心配して来てくれて抱き締めてくれた。相変わらず身体の輪郭は消えないけれどだいすきなひとの身体は温かくて、わたしはこれだけで充分なんじゃないかって思った。何を言われてもすぐにちょっとした言葉とか動作でビビっては分からないでしょと脅えて縮こまるわたしが一番間違ってると思った。黒さを増す空洞と激しく泣きじゃくる赤ん坊は抱き締められている内に柔らかくなっていった。この体温を信じればいいんだと分かった。