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さよならもう二度と触れられない

妊娠してるの?
してる訳無いじゃんきみからのストレスだわ阿呆。
妊娠してたらどうするの?
堕胎してもらうしかない、お金は出す。

もうやめよう、僕はもうやめたい。こんな会話はもうやめよう。
こんな会話。耳を塞ぐのか。
あなたが聞くに耐えないと首を振る目の前のわたしの声は、現実なんです。

壊したいと言って造り上げたものを、なにもいらないってきみは駆けてくんだと、わたしの耳のなか後藤まりこが歌ってる。
ある朝突然あなたが死んだらわたしは大変喜ぶでしょう、もうこれ以上涙を流すことはない、そう言ってたくさん泣いて悲しむでしょうと、わたしの脳のなかでミドリが流れてる。

久し振りにミドリを聴いた。家にいるときはディスクユニオンで100円で買ったCDをひたすらに流している。どうしてあのCDは死にたくなるのか考えていたけれど、あの音のなかには失ったきらきらしい、あのひととの思い出と終わりのにおいが存在しているからだと今朝気付く。

言葉すら力を持たなくなった今、わたしが泣くのはあなたそのものに対してではなくなってしまった。
どんなにどんなにあなたがわたしが汚そうと引きちぎろうとしても煌めきを失わず変わらず光る思い出に対してだ。あなたに抱いていたわたしの、直ぐに在ろうとした感情に対してだ。

わたしのなかに入っていくときのあなたを思い出す。わたしのもんだ、これしかわたしには無いんだ、これしかわたしには許されないんだと必死にしがみついていたその最中ですら信じていたものがあったよ。もしわたしの中に赤ん坊が生まれたら、あなたはわたしを選んでくれるしょうと。身の程知らず。身の程知らず。身の程って何だよふざけるないい加減にしてくれよ。

あなたの言葉で、あなたの汚ぇ言葉で、わたしが抱えていた幻に気付けました。わたしはわたしを護る術として、そんな幻を抱えていたのだろうか。現実からわたしを護る為に。わたしだって、ちゃんと汚い。

あなたのしわっとした柔らかい肌とか、猫のように透明な茶色をした瞳とか、木管楽器のような声とか、今だって変わらずわたしを引きずります。あなたの今までの言葉を信じたいわたしがわたしのなかで叫んでいます。でも、そこばかりを大事に見つめていたら、わたしは息すら出来なくなるだろう。

「何かが段々曖昧に死んでいくような繋がりならば、澄み渡る夜空のような孤独を」