ただの日記

雪が降る夢を見た。
雪の粒はしっかりとしていて、わたしの住む街でもちゃんと積もりそうで、わたしは始終ひとりでウキウキしていた。この景色が恋文のかわりにならないかとスマホを向けた瞬間、夢から醒めた。

今日は給料をとりに職場へ向かったらタイミングが良く、わたしを含め4人で飲みに行くことになった。それぞれ色々なことを抱えていて、それぞれ大切にしているものが違って、それでも毎日生きてる。お酒を飲んでケラケラ笑って、こんなのがずっと続けばいいな、こんなのがずっと続けばいいのになと思った。

昨日の夜、急にテレビが壊れてしまい、一人暮らしの部屋にはもうわたしの声しかしなくなってしまった。テレビが直るまで一ヶ月以上かかるみたいで、もうずっと本を読むしかないなあ。友達とたくさん電話したいな、最近はほんとうに、人の声が聞きたい。

今年の冬も寒いのだろうけど、寒さをわたしはまだあまりよく把握出来ていない。寒いということが苦痛以外の何かに変化したからなのかも知れない。季節に置いていかれないように今夜からは毛布をひっぱりだして、湯たんぽを用意することにする。

毎日毎日、心の柔らかいところを撫でて、確かめて生きている。そうやって生きていないと、弱いわたしはすぐにあそこに戻ってしまうような気がするから。

一番消費されやすいところで消費されなかったらわたしの勝ちだ、わたしはそれを生きてみたい。来年から、一番消費されやすいところに飛び込んでいく。美しいものが見たくてわたしはずっと生きてきたよね。

雪が降ればいいと思う。
あの雪国のような雪が降ればいい。
雪がすべての音を吸収して、鳴るのはわたしの足音と風の音だけ。
その豊かさが、わたしは欲しい。

詠み人知らずの詩

きみはぼくのとなりでねむっている
しゃつがめくれておへそがみえている
ねむってるのではなくてしんでるのだったら
どんなにうれしいだろう
きみはもうじぶんのことしかかんがえないめで
じっとぼくをみつめることもないし
ぼくのきらいなあべといっしょに
かわへおよぎにいくこともないのだ
きみがそばにくるときみのにおいがして
ぼくはむねがどきどきしてくる
ゆうべゆめのなかでぼくときみは
ふたりっきりでせんそうにいった
おかあさんのこともおとうさんのこともがっこうのこともわすれていた
ふたりとももうしぬのだとおもった
しんだきみといつまでもいきようとおもった
きみとともだちになんかなりたくない
ぼくはただきみがすきなだけだ

OVER THE PARTY

一日太陽が沈むまでぼーっとしていた、気付いたら知らないひとにライターを貸した流れから一日遊ぶ流れになっていて、気付いたらこれじゃパーティで踊れないわってんでドレスをプレゼントされ、気付いたら彼と布団にくるまっており、気付いたらわたしはI can'tを繰り返していた、気付いたらわたしはひとり気付かれぬように泣いていた。わたしはやっぱり誰にも触られたくないみたいだった、何ひとつとして零れ落としたくないみたいだった。

自分に呆れる暇もないまま夜が来て、覚醒したらドレスに着替えてパーティが始まる。可愛い女のコふたり、可愛い男のコさんにん。女のコたちと踊り狂って、キスとハグの嵐を降らせ、張り付く男達の視線と手をケラケラ笑いながら振りほどき女のコたちだけで天を仰いで踊った、クラブではわたしの好きな音楽が何曲も流れて、まるでそこは見晴らしのいい地獄、天国とあまりにも似ているからわたしたちはどこに立っているのかまるで分からなくなってしまうね。
よく知らない相手からの好きがどうしても信じられなくて、彼からの試し行動に息も絶え絶えになっている彼女の発した「いいんですよ」は切実に胸に響く、その彼が朝のネオンを背後に光らせながら最後に告げた「オレ頑張るわ」はあまりにも残酷で美しかった。
こうして朝帰りの赤い電車の中、わたしの鼓膜に届く音楽もあのパーティで轟く音楽と同じようにわたしにやさしい。息をして、息をして、息をして、踊れ、あなたの踊り方で。   そう聴こえる。
 
この腕は誰、この唇は誰、ねえお願い助けて、わたしを掬い上げて、そんなときにその声をあげる相手をも、わたしは失ってしまった。
わたしのことはわたしが護るしかなくて、わたしが誰と寝ようとわたしの勝手で、それはあまりにも、あまりにも哀しい。

空っぽになればなるほど、美しい景色が増えていく。

この朝焼けの美しさを愚直に伝えることが出来たなら、どんなにしあわせなことだろう。

「欅って、書けない?」ってめちゃくちゃ可愛い

わたしはどうしたって闘ってしまうし、闘わないと死ぬし、死ななくてもすぐ死にてーとか言っちゃうし、どうせクズで、ていうかお前も大概クズだよ、でもクズだから闘うんでしょ向き合うんでしょ逃げんじゃねえよぶつかって来いよとかやっぱり∞思っちゃうんですよ。君の闘いかたを教えてとかね、思っちゃうんですよね。

あゝ、荒野』を観てめちゃくちゃに泣いた、美しいと思った、そこに映る汗は涙は吐瀉物は痛みと希望で歪む表情は叫びは美しいと思った美しいと思ってしまった、わたしこっちなんだな、毎日毎日ありふれた安らぎとトキメキを与える存在にわたしはなれないんだな、なれる訳ないよな、なれたら一緒に居てくれるらしいんだけどなれなかったな今までずっと。
幸せになりたいならお前で勝手に幸せになれよ。

君を守りたいみたいなことを言われて、何から?敵は何?あなたの必殺技は?みたいなこと思っちゃった。あなたよりわたしのほうが絶対に強いんだもん、なんてね。
誰もわたしに触るななんて、もう二度と思いたくなかったでしょ。

日曜日の深夜は欅坂の番組があって、わたしはその番組名が大好き、超可愛い。

可愛い大好きな女のコたちの叫ぶ本当が、これ以上踏み躙られませんように。これ以上、彼女たちが「全部意味なかった」なんて思いませんように。これ以上、渾身の力を込めて、暗闇に手を伸ばすように紡ぎだした言葉が、「重い」だなんて下劣な否定で一蹴されませんように。ずっとずっと欲しいのは、魂のぶつかり合いの果てに輝く光だけ、わたしたちは、ずっとそうやって生きてきたね。

始発

言葉と自分の抱える呪いや憎しみについてずっと考えていて、もうきっと大丈夫というところに行くまであらゆるSNSをやめようとアプリを全て消していた。
小さなビールを飲みながら仕事から帰ったらポストに手紙が入っていて、開けると青いピアスが出てきた。

「以前、ななこさんがTwitterで"ストロベリームーンを楽しみにしすぎたら謎のネオトーキョーでストロベリームーンを見て、よく分からん親父に弱味を握られあんじゅに青いピアスをプレゼントしてもらい泣くという夢を見た"とつぶやいていた。これは正夢にしなくてはいけないだろう!と青いピアスをGETしたのだが(よく分からん親父はノーサンキューだ)。 あなたの耳で輝く光る青い石を早くこの目で見たいよ。 あなたは美しい夏の人なのに、ついいつも私がぼやぼやしているせいで、一緒にグラスホッパーの杯を交わす機会を逃してしまう。一緒にアブサンを燃やしたいし、スモールライトに行きたいし、公園に行ってピクニックをしてうすいビールでケラケラ笑いたい。また海にも行きたいね。夜の海で建物の光が海に映るのを見て歩きながら煙草を吸って、明るい昼の海でも何もかも忘れて波の間で飛びはねたい。あなたと一緒にしたいことが本当にたくさんあるよ。絶対に会いに行って「この日をください!」と風のようにさらって一日連れ回すんだからな」

わたしは美しい彼女からの言葉を読んで、呪いも憎しみも何も分かっていなかった過去のわたしが見た夢のままに、泣いて泣いて泣いて泣いた。

彼女からもらったピアスを耳に挿れて鏡に自分を映したら、すこし痩せていて、目の下にはクマが出来ていて、それでもずっとずっと綺麗だと思った。憑き物が取れたような、「ボロボロになってく神様になってく君が 透明な銃放つ自由」、どんどん透明になっていって、わたしは神さんに近付いていられるだろうか。

呪いは愛する人へ伝播する、憎しみは自分自身を殺してしまう、「永遠にしないで 透明にしないで 絶対にしないで 好きに壊して」この歌詞にあんなにも泣いてしまう理由、心の奥底に押し込められたわたしが憎しみと呪いで張り裂けそうになっているわたし自身に叫んでいる言葉だったからだった。

「人の根底は変わらないと思う」と告げられ、わたしの根底は何なのか、何がなくなったらわたしじゃなくなるのか、ずっと考えていた。
わたしの根底は、胸に刻んだ蛾だった、世界に夜が満ちて真っ暗になっても光に向かって飛んでいく美しい蛾。忘れていたその事実を、からだごと射抜くような眩い閃光のような輝きでもって、彼はわたしに思い出させてくれた。

魔法は効かず、呪いは解けないのならば、わたしは乾いた武器を持って闘いたいと思う。
湿り気を帯び、憎しみや呪いを伝播させ、刺すべきもの以外すら刺し殺してしまう武器を棄てて、本当の意味で闘える武器を持ちたい。愛するものの尊厳が踏みにじられたときに、毅然と闘えるように。

駅のプラットホームに立っていたら、目に映るすべてが美しく輝いて見えた、こんな景色が見えるのは何年ぶりのことだろう。

人が生きてるって、ちゃんと綺麗だったね。

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強すぎる気持ちはみんなに怖がられる
言葉なんて覚えるんじゃなかった
気が触れる、死んですべてを無に還したい、疾走するダンプに突っ込んでどたまを派手に打って記憶喪失、可笑しい、可笑しい、可笑しい、最初から希望とか歌っておけば良かったのね
言葉にすれば厭われる
言葉なんて覚えるんじゃなかった

最終公演

車の助手席に座って柔らかく微笑む、白いニットを着たフワフワの優しい彼女。朝が来たらご飯を作って、煙草なんて吸ったことがなくて、起きてきた旦那さんに笑っておはようを言って泣きはじめた赤ちゃんを抱きしめに急ぐの。
哀しいことがあったり不安になっても静かに大丈夫って言って時を置いて彼をそっとしておいてあげる、脳内を埋める言葉も「悲しい」とか「寂しい」とかありふれた単語くらいで、強いお酒を飲んだり死にそうなロックを聴いたりしなくても眠りにつける。
いつだって柔らかく微笑んでいて、泣く時も男をギョッとさせないくらいに可愛らしく涙を流す、子供が好きで、映画を観ても感想が簡単で、無印良品ジェラートピケが好きで、髪の毛が茶色でふわふわ肩の上で揺れていて、闘わなくても生きてこれたし誰かに護られることが得意で肌に傷を付けずに大人になれた女の子。
そんな女の子に、わたしもなりたかった。誰よりもなりたかった。闘わないと殺されていたから強くなりすぎたし人生に対する熱量が多すぎるから、わたしは人と生きることがまだまだまだまだ下手糞だ、わたしはゴミ、道端で夜の電灯をギラギラ反射させて光るゴミ、誰がゴミなど欲しがるだろう。
わたしが千切れた心を掻き集めて綴るこれも、きっと一番届いて欲しいひとは、読んでいないのだろう。ずっとそう、ずっとそれの繰り返し。