魔法は効かない呪いは解けないすべての季節に唾を吐く

「誰でも良かったんだよ別にお前じゃなくても股ぐらに穴が空いてれば誰でもいい、愛してるとか信じてるとか本当クソ面倒臭いし死にたいとか生きたいとかお前メンヘラじゃね?お前の愛してるも信じたいも全部都合良かったけどそろそろ重いわ、俺もっとスリル味わいたいしお前の体だけだと飽きるんだよね、ぶっちゃけお前が過去にレイプされたことあるとか浮気されたことあるとか殴られたことあるとか本当どうでもいいよ、でも俺は寂しいし弱い人間だからさ、お前は強いけど俺は弱いからさ、俺は駄目な人間だから、だからまた股開いてくれるよな」

ずっとはやく卒業したくて生きてきたの

誰も追ってこない帰り道を重い脚を引き摺って拳を握り締めて泣きじゃくりながら歩いた夜が明けて、自分の人生に組み込まれていない人だと考えたらとてもラクになってしまった、そもそも人生に関わってと阿保のようなツラして期待に胸を膨らませていたのはわたしだけだったのかも知れない。
バイトの朝は起床と共にやって来る精神の覚醒にやられる、ああまた腐敗の臭いがする一日が始まってしまったようだよと途方に暮れるけど、わたしはそれでもここまで狂わず生きてきた証拠と言わんばかりに気分に合わせた音楽をかけて煙草を一本吸って身支度にかかる、本当に偉いよ。
絶対幸せにするなんてやっぱり悪い冗談だった、今まで何人から何度それを聞いて結局幸せになんてされなかったのだろう、愛してるだなんてつまらないラブレターまじやめてね世界はもっと面白いはずでしょ、わたしの愛だけが関係性のすべてだったのだ?、光る水が爛れた心にしみて生きていけるってことあるでしょう、パチパチと頭の中何かが燃えて消えていく、嫌いな食べ物覚えていてくれないなんて一生一緒じゃなくていいって証拠じゃん、セックスしたくらいで安心してんじゃねえよ、ピンクはもう消えたピンクはもう殺された、あんなに大事なイタズラだって、好きだとかあなたの為ならなんて口では吐きながら結局のところお前はわたしの愛情とか優しさをオカズにしてマスかいてるだけだろ、あなたなら分かってくれるあなたなら分かってくれるあなたなら分かってくれるあなたなら分かってくれるあなたなら分かってくれるあなたなら分かってくれるあなたなら分かってくれるあなたなら分かってくれる、分かってあげるよ、ドロドロ澱んで薄汚いそれも自分の利益になることだけを自然と選び抜いて安寧を手にした気になってるその狡猾さも分かってあげるよ、みんなみんな分かってあげる、わたしは凄いから分かってあげられる、そんな幻想が見たくてここまで来たんでしょ?きみが見たい幻覚を見せてあげるよ、でもねじゃあ一体さ、誰がわたしを分かってくれるの?みんなわたしに好き勝手な幻想を見て、それに飽きたら棄てるんでしょ。ざまあみろって言う為にまだ死なない、殺るならいつだって今だったはずでしょ。
真っ白の反対なんて大して恥ずかしくないよ、戻らない日々なんて最低愛おしくないよ、超つまんないドラマのシーンはお断りですし、夢叶えるより美味しいカレーが食べたい、ずっとはやく卒業したくて生きてきたの、ノーミュージックノーミュージックきみに会える、ノーミュージックノーミュージックくだらない話よ、ノーミュージックノーミュージックとても綺麗で、ノーミュージックノーミュージック毎日クソだ、ミュージック、ワンダフルワールドエンドも独り占め、いつだって想像するのはひとりだけ。

漫画家になりたかった 野球選手は諦めてた ズケズケとなじられる それは今でも同じこと ドブ川に落とされちまえ 真黒にされちまえ あの頃と変わらぬドブ川  異臭を放っている きつい挫折を味わったというの なんか虚しいそれだけ  喜びあい 憎しみあい 求めあい 僕は今だにわからない 本当の愛って何だろう  豆腐の角に頭ぶつけて 僕は誰かを愛せるのか 午後5時まで働くことが嫌でしょうがない 僕にインドは遠すぎるの 自堕落な理想郷 酒を飲んで酔っぱらって 人生をちゃかしてみて 生甲斐なんて面倒なほど なんかみじめで みじめで 誰かトカレフを譲ってくれないか これで終わりにしたい

加地等『これで終わりにしたい』

彼の生き方

何も考えず、何も疑問を持たず、心を尽くさず、目まぐるしく現れては去っていく事象を追いもせず、そうやってただ目の前にあることだけを愉しむ生き方がどうにも出来ない。目を塞ぎ耳を塞いだまま笑っていたその結果に何が横たわっているかは、もう痛いほどに知ってしまっている、考えすぎなんじゃない、お前等が考えなさすぎるだけだ。

狂えたら幸せか?馬鹿になれれば幸せか?大切にしたいと誓ったはずのひとが目の前で泣いていても、その泣き声から上手く逃げられれば一人前の人間か?いつかそのひとが強くなるか死んじまうかした時に綺麗な面して笑ったり泣いたり出来れば満点か?
「私達は、自分の手の届く範囲でしか手を伸ばそうとしない、私は、自分の痛くないところまでしか手を差し伸べない」この苦しみが分かる人間が、一体どれだけ居るというのだろう。教えてくれよ。

祈り

自分自身のことを突き詰めて考える(己の最も汚く最も弱い、本来ならば一等目を背けたい部分と真向かう)、己の不甲斐なさに耽溺し退廃的な自慰に走るでもなく、居直る癖に他者から忘れ去られる覚悟も持てずに蹲るのでもなく、つとめて聰明に、思慮深く、常に答を疑い問を出し続けてただひとつの在るかどうかも分からない光へと向かう祈りのような力を持つひと、そんなひとと共に生きられたら、一体どれだけ幸福なのだろう。

わたしの神さん

溺れるナイフ』を二回観た、叶うことならもっと観たい、永遠に観ていたい。二時間の中にはわたしの人生が在ったから、わたしはもう泣いて泣いて、音がきこえるほどに痛切に分かってしまう。わたしの神さん、わたしの神さん、わたしの神さん。わたしの神さんは死んでしまった。人間になってしまった。はなから人間だったのかも知れない、けれどあの頃のわたしにとって、きみは神さんだった。
現在生きている変わり続けているきみをわたしはもうずっと前から知らない。きみが生きる限りきみは変わり続け、どんどん神から遠ざかってゆくのだろう、それなのに、わたしの中から神としてのきみが消えない。きっと一生消えないのだ。もうあの頃のように人を愛することは出来ないのだという残酷な光をわたしは抱えて生きている。
「菜々子はわざわざ辛い方、辛い方へ生きている気がしていた」と言われた、なあ、お前は良かったなあ、お前は逃げ場があって良かったなあ、ふつうに幸せになれて良かったなあ、わたしにはなあ、逃げ場なんて一生無いんよ。神さんとしてのお前が消えんのよ、あの頃のお前とわたしを、わたしは絶対裏切れないんよ。わたしがどんどん、神さんになるしか生き延びる術は無かったから、わたしは逃げることなんて出来なかった。そもそも、わたしにはもう、逃げ方なんてとうに分からなくなってしまった。
この身ひとつでいちいち傷付いて最強になっていく、永遠に孤独のまま。永遠にわたしの神さんの背中を追いながら。分からなくていい、分かられて堪るか。あれは、あのすべては、わたしだけのもんだ。わたしだけの宝物だ。誰も触らないで。