いつかの詩集(ヤリタミサコだったかな)

カオリン あの夏 2000年の夏 
あのとき 死んだことになってから カオリン どうやって生きているの

漫画家になりたかった 野球選手は諦めてた ズケズケとなじられる それは今でも同じこと ドブ川に落とされちまえ 真黒にされちまえ あの頃と変わらぬドブ川  異臭を放っている きつい挫折を味わったというの なんか虚しいそれだけ  喜びあい 憎しみあい 求めあい 僕は今だにわからない 本当の愛って何だろう  豆腐の角に頭ぶつけて 僕は誰かを愛せるのか 午後5時まで働くことが嫌でしょうがない 僕にインドは遠すぎるの 自堕落な理想郷 酒を飲んで酔っぱらって 人生をちゃかしてみて 生甲斐なんて面倒なほど なんかみじめで みじめで 誰かトカレフを譲ってくれないか これで終わりにしたい

加地等『これで終わりにしたい』

彼の生き方

何も考えず、何も疑問を持たず、心を尽くさず、目まぐるしく現れては去っていく事象を追いもせず、そうやってただ目の前にあることだけを愉しむ生き方がどうにも出来ない。目を塞ぎ耳を塞いだまま笑っていたその結果に何が横たわっているかは、もう痛いほどに知ってしまっている、考えすぎなんじゃない、お前等が考えなさすぎるだけだ。

狂えたら幸せか?馬鹿になれれば幸せか?大切にしたいと誓ったはずのひとが目の前で泣いていても、その泣き声から上手く逃げられれば一人前の人間か?いつかそのひとが強くなるか死んじまうかした時に綺麗な面して笑ったり泣いたり出来れば満点か?
「私達は、自分の手の届く範囲でしか手を伸ばそうとしない、私は、自分の痛くないところまでしか手を差し伸べない」この苦しみが分かる人間が、一体どれだけ居るというのだろう。教えてくれよ。

祈り

自分自身のことを突き詰めて考える(己の最も汚く最も弱い、本来ならば一等目を背けたい部分と真向かう)、己の不甲斐なさに耽溺し退廃的な自慰に走るでもなく、居直る癖に他者から忘れ去られる覚悟も持てずに蹲るのでもなく、つとめて聰明に、思慮深く、常に答を疑い問を出し続けてただひとつの在るかどうかも分からない光へと向かう祈りのような力を持つひと、そんなひとと共に生きられたら、一体どれだけ幸福なのだろう。

わたしの神さん

溺れるナイフ』を二回観た、叶うことならもっと観たい、永遠に観ていたい。二時間の中にはわたしの人生が在ったから、わたしはもう泣いて泣いて、音がきこえるほどに痛切に分かってしまう。わたしの神さん、わたしの神さん、わたしの神さん。わたしの神さんは死んでしまった。人間になってしまった。はなから人間だったのかも知れない、けれどあの頃のわたしにとって、きみは神さんだった。
現在生きている変わり続けているきみをわたしはもうずっと前から知らない。きみが生きる限りきみは変わり続け、どんどん神から遠ざかってゆくのだろう、それなのに、わたしの中から神としてのきみが消えない。きっと一生消えないのだ。もうあの頃のように人を愛することは出来ないのだという残酷な光をわたしは抱えて生きている。
「菜々子はわざわざ辛い方、辛い方へ生きている気がしていた」と言われた、なあ、お前は良かったなあ、お前は逃げ場があって良かったなあ、ふつうに幸せになれて良かったなあ、わたしにはなあ、逃げ場なんて一生無いんよ。神さんとしてのお前が消えんのよ、あの頃のお前とわたしを、わたしは絶対裏切れないんよ。わたしがどんどん、神さんになるしか生き延びる術は無かったから、わたしは逃げることなんて出来なかった。そもそも、わたしにはもう、逃げ方なんてとうに分からなくなってしまった。
この身ひとつでいちいち傷付いて最強になっていく、永遠に孤独のまま。永遠にわたしの神さんの背中を追いながら。分からなくていい、分かられて堪るか。あれは、あのすべては、わたしだけのもんだ。わたしだけの宝物だ。誰も触らないで。

わたしと全然違くても分かり合うどころか分かれなくてもそれでいい、それでもちゃんと愛してる、分からないあなたまで愛する力がわたしにはあるから。

料理長の音楽は豚肉の焼ける音だった

自分でも気付かぬうちに、ガキの頃のように人を操ろうとしていたことに気付き愕然としたのが先週の夜。誰もわたしを呼んでくれなかったから、誰よりも巧く笑って美味く鳴いて甘く眉根を顰めることで人を何とか引きつけようとする所作が、あまりにも長けてしまったみたいだ。
多分愛情の示しかたも方向も線も全然基軸が違って、その差異に押し潰されそうになる、新しいルール、もう二度と人を操るな。分からないということに何度も打ちのめされ分かったかも知れないというおめでたい勘違いにきらめいて再び分からないに直面する、わたしは早く人間になりてえだけなんだよ。
分かり合えるなんて到底不可能で、ならばせめて、わたしだけはあなたを分かりたかった。わたしがこんなに毎時間毎時間身を焦がしながら悶え強く願うそれすら容易く目の前で割れた、わたしはあなたの目の前で生きていて、ねえもっとわたしに触って、もっと確かめて、そんなにわたしを朧にしないで、どうして分からないの、どうして分からないの。わたしはどうして分かりたいの。 あなたを分かりたいだなんてそれは多分違くて、わたしはきっと、人間になりたかっただけだ。なにものにも縛られず、当たり前のように目の前で生きている大切な人を信じ、直ぐに愛することが出来る人間に。呪いはまだ解けない。